春先にウグイスのさえずりを聞くと、なぜか心地よい気持ちになり、心が癒されるものです。
最近では、郊外の山林深く入らないとウグイスのさえずりを聞くことがなくなってきたのは残念のことですね。
ところで、ウグイスは春先にだけ鳴くのではなく、年中鳴いていることはご存知でしょうか?
ただ、季節ごとに鳴き方が違うので聞きなれない方はわからないかもしれません。
そこで、ウグイスはどうして春先にだけ「ホーホケキョ』という心地よいさえずりをするのか?
また、他の時期にはどんな鳴き方をしているのか?その理由をお伝えしたいと思います。
ウグイスの鳴き声の種類と意味
まず、結論から言うと、ウグイスにはつぎにあげるように3種類の鳴き方があります!また、その鳴き声も季節ごとに違っているんですよ。
- 「さえずり」…”ホーホケキョ”=オスがメスに対する求愛と縄張り主張
- 「地鳴き」…”チャッチャッ”=仲間同士のコミュニケーション
- 「谷渡り」…”ケッキョ、ケッキョ”=警戒の鳴き方
ホーホケキョと鳴くのは、春先から夏の初めごろまでで、秋から冬にかけては ”チャッチャッ”と鳴きます。そのように違う鳴き方をするには、ちゃんとした理由があるんです。
それでは、一つ一つの鳴き方について検証してみましょう!
さえずり:ホーホケキョと鳴くのはなぜ?
ウグイスが初めて鳴くのを初音(はつね)と呼びます。
気象庁では彼らが鳴き始めた日を春の訪れと記録しているそうです。
ウグイスは秋から冬まで”チャッチャッ”と鳴きますが、春になると”ホーホケキョ”と鳴くようになって巣作りを始めます。
このように鳴くのは、春になって繁殖の準備を始めるためです。
しかも、”ホーホケキョ”という鳴き声をするのは繁殖期のオスのみです。
暖かい地域では、2月ごろから寒い地域でも4月~5月ごろには、ウグイスの『さえずり』が聞ける時期となります。
特に、ウグイスの鳴き声が良く聞かれる時期は、繁殖期の自分の子どもがメスとの間に誕生するまでです。
したがって、無事自分の子孫が残せたオスのウグイスは鳴くことが少なってしまいます。
ただ、8月になっても”ホーホケキョ”と鳴いているウグイスがいますが、これはメスに相手にされず自分の子孫を残せていないウグイスのようです。
オスは限られた繁殖時期に自分の子孫を残すためメスを振り向かせようと鳴き声の練習を懸命にすると言われています。
春先の少し寒さが残る頃、”ホーホケッ?”とうまく鳴くことができないウグイスの声を聞いたことはないですか?
これを「ぐぜり鳴き」と言います。
ウグイスは若手、熟年など関係なく、春先はこの「ぐぜり鳴き」をします。
そして何回も練習を重ね、やっとあの『さえずり』ができるようになります。
余談ですが、”ホー”は息を吸う音で”ホケキョ”が『さえずり』と言われています。
地鳴き:チャッチャッと年中鳴いている?
ウグイスは春先だけ美しい『さえずり』を聞かせてくれて、後は静かにしているような印象です。
でも、本当は年中鳴いています。しかも、オスだけではなくメスも同じように鳴きます。
秋も深まってくると、急におとなしくなり、”チャッチャッ”という地味な鳴き声に変わりますが、これを「地鳴き」といいます。
地鳴きは、日常会話ともいえる鳴き方で、仲間同士の確認や警戒、飛び立つ時の掛け声などいろいろな意味がある声です。
また、ウグイスの地鳴きは「笹鳴き」と特別に呼ばれなす。
その理由は、ウグイスは笹藪を好み、地鳴きがよく笹藪の中から聞こえてくるからだそうです。
谷渡り:ケッキョ、ケッキョと鳴くのは威嚇のため
「ウグイスの谷渡り」と言われる鳴き声であるのはご存じですか?
最初は大きな鳴き声から始まって、だんだん小さな鳴き声に変わっていくので、ウグイスが谷を渡っていくように聞こえたことから名付けられたそうです。
この鳴き方は特にウグイスの子育て期間中によく聞かれるます。
なぜなら、ウグイスが神経過敏になり、自分の縄張りに他のオスが近づいたり侵入したりしてきた時に威嚇するためです。
ウグイスがさえずるときの鳴き方とは対照的です。
季節によって鳴き方が違うには理由がある
ウグイスは季節によって鳴き声が変化します。これは日照時間に関係していると考えられているようです。
なぜなら、日照時間が長くなるとオスの体内で特別な物質が増えることにより、脳や喉の筋肉が活性化されるからです。
だから、ウグイスは鳴き方の練習することで”ホーホケキョ”と美しく鳴くことができるようになると言われています。
逆に、繁殖時期が過ぎ日照時間が短くなってくると、喉の筋肉が沈静化され”チャッチャッ”という小さな地鳴きと呼ばれる鳴き声に変化します。
では、なぜオスだけが特殊な鳴き方をするようになったのでしょうか?
ひとつは、求愛するメスを探すためと、もうひとつは、繁殖のため縄張りを守ろうとするからです。
つまり、外敵の関心を自分に向けることによりメスやひなを危険から守るためだと考えられます。
ただし、縄張りを主張するときのさえずりは求愛の時と聴き比べると、もう少し低いさえずりのようです。
ウグイスは、特別な繁殖の仕方をしています。実は一夫多妻で、オスが1羽に対してメスが複数いる場合もあります。
そして、ひなを育てるのは、ほとんどメスの役目です。オスは、縄張りを守るという大切な仕事をしていて、オスとメスで別の役割をしていることになります。
ところが、繁殖期を過ぎて秋口の終わり頃には繁殖や縄張りを守るという役割が終わるので無理をして複雑なさえずりをする必要もなくなります。
ですから、オスは”ホーホケキョ”とさえずりをしなくなるのです。
ウグイスのさえずりが違う地域もある
ウグイスは春になると暖かい繁殖地に移動して、毎年新しい縄張りを作る修正があるようです。
ところが、もともと温暖な地域では、わざわざ繁殖のために広範囲に移動しなくとも、狭い地域で繁殖期を迎えることができます。
だから、緩い縄張り争いで済むようです。
縄張りがハッキリしていなければ、メスに求愛を求めるためにさえずりが複雑であればあるほど、オス同士の競争やメスの誘引に有利になります。
ところが狭い地域では、ほぼ縄張りの形成はされているために、単調な鳴き方で済むのです。実際、奄美諸島や沖縄などの島では繁殖期の移動が見られず、縄張りも確立されているそうです。
そのために、オス同士の競争も緩やかという研究発表の記事もありました。
ハワイの博物館でウグイスの標本を調査する浜尾章二研究員(国立科学博物館提供)の記事を⬇︎参考にさせていただきました。
参照:新発見! ハワイのウグイス「ホーホケキョ」と鳴かない それでは…何と?
まとめ
ウグイスは寒い時期には”チャッチャッ”と鳴きますが、春先ごろから”ホーホケキョ”とさえずり始めます。
これは春先から繁殖の準備を始めるためです。
また、このようにウグイスが季節ごとに鳴き方が変わるは日照時間も関係している。
つまり、日照時間が長くなるとオスの体内で特別な物質が増えることにより、脳や喉の筋肉が活性化され『さえずる』ことができる。
逆に日照時間が短くなってくると、喉の筋肉が沈静化されて鳴き声が小さくなり『地鳴き』という鳴き声になる。
では、どうして春先になるとホーホケキョと鳴くのか?
ホーホケキョと鳴くのは2つの理由があるため
1.メスへの求愛のため
2.繁殖の期間縄張りを守るため
ウグイスは、鳥としては比較的例の少ない一夫多妻の繁殖形態を取っています。
このため雄は繁殖地に着くと、縄ばりを主張するため盛大に鳴いて他の雄と競い合うのです。
なぜなら、一部の地域以外は、基本的にウグイスは広範囲に移動します。そのために縄張りを守ることは並大抵ではないからです。