秋の虫が鳴き始めると、なぜか暑い夏もようやく終わりに近づき、秋が近づいている気配を感じて気持ちも癒されますよね!
ところで、『秋に鳴く虫』と言えば鈴虫とコオロギがその代表ですよね!ただ、その見分け方や、鳴き声の違いがよくわからない方も以外と多いのではないでしょうか?
そこで、”どんな虫なのか?“それぞれの特徴を紹介した上で、この虫たちの相違点と共通点を検証してみたいと思います。
鈴虫とコオロギの相違点
最初に鈴虫とコオロギは、同じ秋に鳴く虫ですが、見ると違いがすぐ分かります。そこで、その相違点を探してみましょう。
とくに違いが分かるのは、次のような点です。もちろん、探せば、もっと出て来るかもしれません!(^_-)
1.大きさと形体
2.耳の位置
3.移動方法
4.鳴き方の音色の高さ
5.人の気配への反応
大きさと形体
鈴虫とコオロギの大きさを比べたら、コオロギの方がサイズが大きいです。
鈴虫の大きさはだいたい15㎜~25㎜くらいで、ちょっと小さく、これに対してコオロギは30㎜くらいの大きさです。
種類によっては10~40㎜くらいと違いはあります。
また、鈴虫の形体は、小さな頭部と体全体は瓜型をしていて幅広い翅を持っているのが特徴です。
これに対してコオロギは円筒形の頭と紡錘形の体つきをしています。太い後ろ足を持っているのが特徴となります。
耳の位置
鳴く虫には必ず耳があります。耳というと、どうしても人間を初めとする哺乳類をイメージすると顔の部分(視覚・嗅覚・聴覚は近いところに集まっている)に付いているという印象が強いと思いますが、以外と虫は離れた部分にあるのはご存じでしたか?
実は耳は前脚にあります。そこで仲間の声を聴いて意味を理解します。
驚くことに耳には鼓膜のような膜もあるんですよ!
ただし、このような機能は成虫になるまで使うことができません。
さらに、鈴虫とコオロギをもう少し詳しく調べてみると、耳の位置がちょっと違ったところに付いています。
鈴虫の耳↓
鈴虫の耳は「前あし」の脛下(すねした)の内側にありますが、コオロギは「前あし」の外側にあります
コオロギの耳↑
鈴虫もコオロギも「あし」全体は毛で おおわれています。
ただし、耳だけは毛が はえていません。 耳は、両方とも音を聞くための鼓膜(こまく)があって皮膚と直接つながっています。
移動方法
鈴虫はふだんはジャンプして移動はしません。 仲間同士の争い時や、天敵に気づいたときなど、身に危険を感じたときにだけ ジャンプします。
ふだんは、高い場所・低い場所などに移動するときも、歩いて移動します。
跳び下りたほうが速いところでも、わざわざ遠回りして歩きます。
これに対してコオロギも歩いて移動しますが、結構、鈴虫と違ってジャンプして移動することも多いです。
特に後脚が長く太く発達しているので、移動や逃走の際には、後脚を利用して跳躍する種類の方が多いようです。
鳴き方の音色の高さが違う
鈴虫は高い音色で鳴くのでコオロギよりもよく響きます。(だからこそ美しいと評されるのですが、近くで鳴かされると人によってはうるさいく感じてストレスになることも…)
鈴虫を初めコオロギ科の仲間達は固有の周波数(音の高さ)と音色を持っていて、それぞれが重ならない様になっています。
また鳴き声を変化させて仲間と連絡を取り合うこともあります。周波数と言っても一つの音色でいろんな周波数を含んでいます。
鈴虫の一番大きな目立つ音の周波数は4500ヘルツくらいです。
ちなみにコオロギ(エンマコオロギ)は4000ヘルツくらいです。
周波数の高低によって、仲間が近づいているのか?捕食者が近づいているのか?を判断材料にしていることも興味が注がれます。
※参考までに電話で聞こえる周波数帯域(300Hz~3400Hz)なので、秋の虫たちの鳴き声が伝わりません。
人の気配への反応
鈴虫は人をあまり恐れず、コオロギのように人の気配を感じて一目散に逃げ出してしまうということはありません。
鈴虫のような小さな昆虫は天敵が多いため、体が比較的小柄で外敵から見つかりにくい黒っぽい色(保護色)をしています。
そして、体の倍以上ある長い触角でまわりの様子をうかがい、危険を感じると瞬時に翅をたたんで草むらの陰に逃げます。
地表を歩くだけで跳びはねることはほとんどありません。
基本的に暗い茂みに生息しているので、自生の鈴虫を観察することは不可能に近いです。
もし仮に鳴き声が聞こえたとしても、ガサガサと草をかき分けて人が近づけば、たちまち鳴くのをやめてしまいます。
これに対してコオロギは、目の前に急に現れるものを警戒するため、通常はそれから逃げようとする反応が多くみられます。
鈴虫と同じように黒っぽい色や枯れ葉のような色(保護色)をしており周囲の状況を察知する長い触覚も持っています。
コオロギもふつうは歩いて回り、動きもゆっくりですが、人の気配などを感じて危険を察知した場合は、太い後ろ足で飛び跳ねるように移動して、その場から立ち去ろうとします。
特徴 | 大きさ | 体つき | 鳴き声 |
---|---|---|---|
鈴虫 | 体長17〜25㎜ | 小さな頭部と体全体は瓜型 幅広い翅 | リ~ン リ~ン |
コオロギ | 体長30㎜ (種類により 10㎜~40㎜) | 円筒形の頭と紡錘形の体つき 太い後ろ足 | コロ コロ コロ |
鈴虫とコオロギの共通点
今度は鈴虫とコオロギの共通点を探してみましょう!すると次のような点が見つかりました。
1.触覚が体以上に長い
2.鳴き分けができる
3.飛ぶことができない
4.夜行性
触覚が体以上に長い
鈴虫もコオロギも長い触覚が生えています。両方とも触覚が体以上に長いことも特徴の一つです。
この触角があるおかげで、暗闇でも障害物にぶつかることなく歩けたり、触角を器用に動かすことで、同じ仲間と交信ができます。
ただし、鈴虫は体が黒いのに対して触覚はとても長く白い色をしているので、すぐに見分けはできます。
鳴き分けをする
同じ虫の鳴き声でも、温度や時間によって鳴き声が変わるものがいますが、鈴虫とコオロギだけは、鳴き分けをすることができます。(※マツムシは鳴き分けをすることはできません)
それはなぜかと言えば、鈴虫とコオロギは鼓膜を持っているため、音を聞き分けることができるからです。
そのため、自分たちが発する鳴き声で行動や意思を相手に届けることができるとされています。
鈴虫の鳴き分け
鈴虫が鳴く気温は、およそ15~30℃と、幅がありますが気温が15℃以下になると、ほとんど鳴かなくなります。
1.縄張りの主張と威嚇
2.求愛(誘い鳴き)
1.縄張り主張や威嚇(いかく)
「リンリン」と、短く鳴くのは、縄張りの主張や威嚇するときです。
鈴虫同士が争い始め、威勢の良い方の鈴虫が短く「リンリン」と鳴き始めます!
オス同士の争いの時に、相手をおどす鳴き方で、「おどし鳴き」とも呼ばれます。
2.求愛(誘い鳴き」
「リリー・リリー・リリー」と、くり返し鳴くのは、求愛しているときです。
これはオスからメスへの求愛の音色なので、鳴くのはオスの鈴虫だけでメスが鳴くことはありません。
その鳴き声が鈴を細かく振った時の音に似ていることから、「鈴虫」という名前が付けられたと言われています。
コオロギの鳴き分け
コオロギは3種類の鳴き声を使いわけています。
1.縄張りの主張
2.求愛(誘い鳴き)
3.威嚇(いかく)
1.縄張りの主張
夕方から夜にかけて、「コロコロコロ」とよく通る美しい声で鳴くのは、「ひとり鳴き」と呼ばれるもので、オスが縄張りを主張する鳴き方です。
2.求愛(誘い鳴き)
明け方や夕方に「コロコロリー」と低く弱い声で鳴くのは、「誘い鳴き」と呼ばれる鳴き方。
これはメスが近づいた時の鳴き声で、メスに求愛をしているのです。
優しく、ささやくように静かな鳴き声を出します。一番音量が大きいもので、一般的によく聞くコオロギの鳴き声はこれにあたります。
この鳴き声が聞こえると、メスはその鳴き声の元へ向かい、他のオスは少し離れた場所へ移動します。
こうすることによって、隣同士でオスが鳴きあうことを防ぐことができます。
3.威嚇
「キリキリキリ」と短く強く鳴くのは「争い鳴き」と呼ばれます。
他のオスが近づいてケンカをしている時の鳴き声です。
この音は相手に近寄るなと意思表示しているため、コオロギがこの鳴き声を聞くと近寄らなくなります。
ただし、メスの取り合いや、縄張り争いをしている時はこの鳴き声を聞いても引き下がりません。
飛ぶことができない
鈴虫もコオロギも翅(はね)があるのに、ほとんど飛ぶためには使いません。
この翅(はね)をこすり合わせて音を出し、仲間同士の交信のために使われます。
きれいな鳴き声は、オスがメスの関心を引きつけるためのものです。
鈴虫の右の翅の裏にはヤスリのようになった脈があり、これを左の翅の表側にある突起部分でこすって音を出します。
コオロギの場合は上になっている翅(はね)の裏側にギザギザが付いています。
このギザギザをもう一方の翅(はね)にこすり合わせて音を出します。
夜行性である
鈴虫やコオロギは基本的に夜行性であり、昼間は地表の物陰に隠れ、夜に下草の間で鳴き声を上げます。なぜなら、彼らは、すばやく動き回ることが出来ないからです。
従って、カラスやイタチなどの捕食者から身を守るためにも周囲が明るい時には、”ジイ~”と身を隠しているのでしょうね?